日本人が韓国で働くことは可能なのか、そのためにはどんな方法があるのか、ビザはどうすればいいのか、などについて、私が韓国で働いた経験をもとに整理してみました。
まずは日本人が韓国で働くケースを大まかに3つ分けてみました。
1.日系企業の駐在員として働く
韓国には数百の日系企業が進出しています。一つ目の韓国で働く方法はその日系企業の韓国駐在員として韓国で働くということです。
駐在員という言葉になじみのない方のためにもう少しかみ砕いて説明すると、日本に本社のある会社に所属している社員が、海外転勤になりその国でしばらく働く立場になる人を駐在員と考えてもらえばいいと思います。
日本で誰もが知っているような会社(特に製造業・メーカー、商社、銀行)では韓国に古くから進出しているところが多いです。
そのような会社に日本で就職し、韓国の駐在員に選ばれることで韓国で働くことができます。
会社の規模にもよりますが、駐在員では韓国の法人の代表者で行くか、もしくは課長などの中間管理職で赴任するケースが多く、製造業系の会社であれば日本の工場の製造技術を伝えるために割と若いクラスの社員が赴任するケースもあります。
メリット
給与、住居手当などの待遇が良いことが多いです。ほぼすべての駐在員の住居は会社が100%負担します。会社によって単身なら○○ぐらいの広さ、家族連れなら○○ぐらいの広さという決まっているケースが多いです。
給与の額についてはもちろん会社や役職によって異なりますが、海外赴任手当のようなものも含めて一般的な韓国のサラリーマンの給与と比較して高い方だと思いますし、上記のような10万円以上する住居費を会社が持ってくれるとすると生活はかなり良い方だと思います。
また家族連れの場合、子供の幼稚園、学校の授業料を負担してくれる会社も多いと思います。
ちなみに、ソウルにはソウル日本人学校という日本の教育をそのまま受けることができる学校があるので、ソウルに転勤した駐在員の子供達はこの学校に入ります。私の子供たちが通っていた数年前でも1人4万円/月の授業料を払わないといけなかったので、これを会社が負担してくれるという待遇もかなり良いですね。
デメリット・問題点
ほとんど良いことばかりの駐在員ですが、すぐにでも韓国で働きたい人からすると、「いつから韓国にいけるか分からない」、「もし駐在員に選ばれたとしても任期が終われば帰国しないといけない」、「韓国に駐在が決まるかは分からない」など、訪韓するタイミング、帰国するタイミングを自分でコントロールできないというところがあります。
また、これもそもそもの話ですが、韓国に赴任するチャンスがある企業というのは概ね日本の大手企業が多いので、そんな企業に就職することが難しいという問題もあります。
ただし、新卒ではそれらが難しくても、中途の求人の中には韓国語がある程度できたり、留学したことがある人であれば、「数年後の韓国赴任を見据えた採用」みたいな募集はたまにあるので、こういうところを狙ってみるのもいいかもしれません。
あとは文化的なところを言えば、いずれ帰国する駐在員に対して韓国現地の社員はどこか冷ややかというか、同じメンバーとは思われない壁のようなものがあることもあり、その点では下記の現地採用の社員に比べ、駐在員対現地の韓国人の間に仲間意識は持たれにくいこともあります。
2.日系企業の現地採用として働く
二つ目は上記1.で紹介した日本に親会社のある企業に駐在員としてではなく、現地採用として働くことです。(私はこれでした。)
駐在員と現地採用は簡単に言うと所属先が異なります。
駐在員は日本本社から赴任しているので、韓国に赴任していても所属は日本です。それに比べて現地採用というのは同じく韓国にある日本の会社に勤めているとしても、韓国側の会社の所属(雇用関係がある)ことを言います。
採用のプロセスも日本本社ではなく、韓国法人の方なので、直接韓国法人の採用担当等に履歴書などを送ったり、韓国現地の採用エージェントに登録して応募することになります。
採用エージェントについては、私自身は採用担当者として韓国にいるときにお世話になりましたが、現地採用を狙う際に活用できることがあります。
基本的には日本のリクルートエージェントや、dodaエージェントのようなサービスと同じで、エージェントに登録することで、エージェントから現在の企業の募集状況や、応募についてのアドバイスをもらえたりします。
私が韓国にいた数年前でも、韓国ソウルにある採用エージェントには日系も多く、日本人担当者もいたため、そんな人たちと情報交換することも多くありました。
メリット
駐在員の比較として、採用されれば基本的には韓国法人の所属なので、日本の本社に帰任することはありません。つまり、その会社で働ける限り、自分が働きたいだけそこで働けます。
また、その人の経歴や雇用条件にもよりますが、駐在員よりも採用されるハードルは少し低いかもしれません。私の場合は採用エージェント経由でも応募はしていましたが、最終的には自分で企業の採用ページから直接応募し、入社することができました。後から考えてもその会社の日本本社で採用されて韓国に赴任するというルートは私にとっては難しかったと思います。
デメリット・問題点
こちらもまずは駐在員との比較ですが、給与やその他の待遇は駐在員と比べると落ちることが多いです。
私が韓国で初めに働いていた職場では、現地採用の私と、日本からの駐在員の先輩の計2名の日本人がいました。
駐在員の先輩は、上記の通り住居については会社が全額負担しており、ソウルでもかなり立地の良いアパートに住んでいました。
現地社員の私は住居を会社が負担してくれるという待遇は無いので、月収の中でやりくりしながら家族と住めるビレッジをソウルの少し郊外で借りて住んでいました。
給与も基本的には韓国現地の基準で設定されるので、色々な手当のついた駐在員と比べると少なくなるケースがあります。
その他、駐在員は日本に本社出張などと合わせて日本へ一時帰国することも会社のお金でできることが多いですが、現地社員は本社に行くことはほとんどないので、実家に帰国するなどは自費になります。
私はこの立場だったので、駐在員を羨ましく思うことはありましたが、前述の通り途中から駐在員への道を目指すのも難しかったこともあり、現地採用としてある程度の地位について月収を上げる道を目指すこととなりました。
3.韓国企業の現地採用として働く
3つ目は、前述の2.に近い話ですが、要は韓国にある日系とは関係のない普通の企業で働くことです。
この方法はさらに2つに分けることができます。
①日本、日本語、日本人に関係のある仕事
例としてこのタイプの仕事で私が関わりが多かったのは、韓国の大手の法律事務所です。
韓国の大手の法律事務所には必ず日本企業向けのチームがあります。
それは韓国にある日本の会社の顧問契約を結び、韓国内の法律関係の相談に載るケースが多々あるからです。
特に雇用関係の問題が発生することが多いので、日本であれば社労士に依頼するレベルの案件でも、韓国では弁護士の助けを受けることが普通でした。
そんな時に、弁護士事務所の弁護士とやり取りする際の窓口として日本人や日本語が上手な韓国人が担当することが多く、ほとんどは韓国語のできる日本人が1,2名在籍しています。
クライアントである日本企業からしても、いくら日本語が上手な韓国人よりも、日本語が通じる日本人の方が信頼感があります。
私が知っているだけでも韓国で数名しかいないですが、こういうポジションで働いている人は、ある程度安定して働けている印象があります。
その他にも、日本語教師や、韓国の大学で教員として働く方々もこちらのカテゴリーになるかと思いますが、日本人や日本語を軸としたスキルやキャリアで就くことが有利な仕事になります。
②日本との関係の薄い仕事
これは普通の韓国人と同様に日本とはあまり関係ない一般企業に勤めることです。
恐らく日本人としてこのタイプで就職できている人はかなり稀な方だと思いますが、韓国人と同じぐらい韓国語ができ、またその他の専門性を持っている人であれば、韓国の大手の企業に就職することもできないことではないと思います。
10年以上前ですが、私が日本に支社のある韓国の大手企業に勤めていた時、韓国本社に研修で行った時の話です。在日韓国人で日本で育ったという女性がその韓国大手企業の本社の社員として働いていました。
その女性は、育ちは日本ですが、大学から韓国の有名大学に進学し、そのままその大手の韓国企業に就職できたそうです。
在日韓国人なので国籍は韓国、韓国での高学歴、韓国語、日本語、英語が堪能という人だったので、そんな人なら韓国の大手に入ることもできるのかもしれません。
ビザについて
ワーキングホリデーを除いて、韓国で働こうと思うと日本人であれば3か月の旅行ビザでは働けません。
ピザについていえば主に3つで、私のように配偶者が韓国人の場合に発行される『結婚ビザ』、両親のどちらかが韓国人の場合の『同胞ビザ』、もしくは会社に発行してもらう『就業ビザ』です。
韓国に住んでいると配偶者が韓国人の『結婚ビザ』を持っている日本人女性をよく見かけました。私のように韓国人妻の配偶者として『結婚ビザ』を持っている日本人男性はあまりいませんでしたが、これも就労できる立派なビザです。
ここでは『就労ビザ』についてもう少し書いていきます。
前述した駐在員は当然日本から派遣されるため会社が就労ビザを手配してくれます。
問題は現地採用や韓国企業で採用されるときです。
『就労ビザ』は会社に発行してもらうものと書きましたが、多国籍の社員を雇用している会社であれば、ビザの発行手続きにも慣れているので、そこまで問題はないです。
ただ、ビザの手続きをしたことが無い企業、あまり対象者のいない企業にとっては、それだけで面倒な作業なので、そんな企業はそもそも日本人を含め『就労ビザ』が必要な外国人を採用していないかもしれません。
ただし、多くはないですが、このように『就労ビザ』を出してくれる会社があることはあるので、『結婚ビザ』や『同胞ビザ』などのビザが無いから韓国で働くこと諦めないといけないことはないということをお伝えしたいです。
私のお薦め
ここまでが日本人が韓国で働くための方法についてまとめましたが、最後に私の経験をもとにしたお薦めを書いて終わろうと思います。
私が韓国に留学したのは大学4年生の春から6か月間でした。日本の地方の私立大学に通っていたのですが、3年生が終わるころにはほとんど卒業のための単位を取っていたので、4年生は1度も大学に通わずに卒業しました。その4年生の期間に半年韓国に留学していたわけですが、当時はそのまま大学卒業とともに韓国で就職したいと思っていました。
しかし、実際には日本の地方大学卒業見込みで少しだけ韓国語ができる日本人男性が就職できるところはありませんでした。
そこで当時、知り合いの知り合いに世界的に有名なコンサル会社の韓国法人に勤めている日本人を紹介してもらい、この方に韓国でどうしても働きたいと相談したところ、とりあえず日本で何でもいいから社会人経験を積んでからにした方が良い、とアドバイスをもらいました。
紆余曲折ありながらこの後約7年経ってから、韓国語だけでなく、日本で社会人経験と他の業務経験を積み念願の韓国での就職という目標を達成するのですが、私は当時の私にアドバイスするとすればやはりそのコンサル会社の人がアドバイスしてくれたことと同じことをいうと思います。
つまり、ただ韓国語ができるだけではダメで、その他の専門性や経験があった方が良いということです。
韓国でできた日本人の知り合いの多くは、韓国語+士業の資格を持っていたり、大学院の研究員だったり、美容の専門だったり何かしらの+アルファの専門性を持っていました。
もちろん、これらが無いと絶対ダメということは無いと思いますが、結局はそれらの経験を母国の日本で積んだ後の方が、より良い形で韓国で働けるということはあると思います。
20代のときの私のように、韓国で働いてみたいという目標を持っている方には、是非あきらめずに色んな道があることとを知っていただき、何らかの参考になれば幸いです。
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