前回に引き続き、韓国ドラマ「私のおじさん(나의 아저씨)」についての感想(魅力について)です。
『学歴、社会的地位』
主人公のドンフンの兄と弟の三兄弟はそれぞれ良い大学を出たのに、長男と三男の弟は序盤はニートみたいな扱いでしたね。
4話目ではお母さんがこっそり帰宅した長男に温かいご飯を注ぎながらも「고학년 빙신(병신)들아!!=高学歴の変人達!」と言うシーンは、良い大学を出ても、のらりくらりしながらうだつが上がらず、何の役にも立っていない兄弟の姿から学歴社会の負の側面を見せていて、それらは自分や、家族、友人などの身近な誰かに当てはまる部分だと思います。
また、物語が進むにつれてこの長男と三男は地元の仲間の経営していた町の清掃屋を引き継ぐことになります。
この清掃員という職業もまた社会的地位の高くみられる大企業のサラリーマンとは反対に、社会的地位の低く見られがちな職業として登場させているのだと思います。
『兄弟愛』
兄弟(ヒョン・トンセン)という関係は韓国独特なものかと思います。
もちろんこのドラマでは実の兄弟として3兄弟の兄弟愛が描かれていますが、韓国社会の中では、日本でいう先輩後輩のような間柄において、男同士で少し親密になれば、先輩=兄貴、後輩=弟、とい関係に発展します。
これは大学生や社会人になる中で、男同士なら自然とできてくる関係で、一長一短ありますが良いところだけ見ると、まさにドラマの中の3人兄弟の関係のような情けないところも見せ合ったり、一緒にバカ騒ぎする姿に、羨ましく感じる部分だと思います。
『地元の仲間』
兄弟愛とつながる部分ではありますが、ドラマの中でたまに出てくる地元の仲間たちとの触れ合いもリアルで和やかであり、どこかしら中年男性が共感できたり、羨ましく思える部分ではないかと思います。
ドンフンの同級生であるジョンヒが切り盛りしている居酒屋で集まって飲んだり、おじさんサッカーチームでみんなでボールを蹴ったりする姿はとても楽しそうでした。
特にリアルだったのは、ジョンヒの居酒屋でみんなで飲んでいるシーンが何度かありましたが、おそらく日本語の字幕では追いきれないほど、このおじさん達はどうでもいい会話をしているところです。実際、おじさんたちの居酒屋での会話はどうでもいい(他愛のない)ことばかりで、またそれで良しとされる場ではないでしょうか。
このドラマの俳優陣の演技のことはまた長くなるのでしませんが、これらのおじさんたちの雰囲気をうまく出したシーンの数々もドラマのメインストーリーとは違う部分で良い味を出していたと思います。
『親子愛』
三兄弟を見守るお母さんのシーンにも心温まったり、時々少し胸が痛くなるシーンもありました。
特に初めの方は長男と三男に対して、しっかりしろ!という親としての心配や苛立ちのシーンで、ドラマとしては暗くなりそうな前半のメインストーリーに対して、少し笑える要素としてお母さんとうだつが上がらない二人の息子というシーンが多かったと思います。
お母さんの出てくる中盤ぐらいからのシーンで、次男のドンフンに対して心配するシーンです。
ドンフンはおそらく子供のころから頑張り屋で親にとっても兄弟にとっても良い子だったのでしょう。ただお母さんは昔からそんなドンフンがなんだか不憫で、不幸せに見えていたようで、それがとても気がかりのようです。
大企業に勤めていて、弁護士の綺麗な奥さんがいて、子供は海外に留学させていて、持ち家(アパート)もあって、だれもがうらやむ平凡かつ理想的な生活をしているのに、いつもどこかに影のある主人公に気づいている。お母さんはそんな数少ない人の一人だったと思います。
そんな子に不憫な思いをさせたくない親の心と、またこれは少し違うテーマとして書きたいですが、主人公のドンフンの虚無感へ共感する視聴者は多かったはずです。
『お葬式』
お葬式はこのドラマのもう一つのサブテーマと勝手に行ってしまいたいぐらいポイントだっと思います。
というか私自身が後から先輩の韓国人とこのドラマの答え合わせに花を咲かせていた時に理解が深まったことの一つでした。
上の写真は9話目でドンフンが出世コースに乗り昇進する可能性が出てきた後の話です。ドンフンが出世することで、今後お母さんのお葬式を上げる際には、たくさんの参列者と献花が送られるであろうことを想像して感慨深くなっているところです。
初めこのシーンを見たときには何とも思いませんでしたが、先輩いわく、韓国人にとって、親や自分のお葬式にたくさんの参列者や献花が送られることが誇らしく、親の葬式であれば子として最大の孝行だと考えているのだそうです。
私が知らないだけかもしれませんが、日本でそういう考え方があるとは聞いたことがなかったのですが、結婚式にもたくさんの人を呼ぶ韓国なので、死んだときもたくさんの人に見送られることがうれしいことなんだなぁというのをこのドラマと先輩の話で知ることになりました。
またドラマの最終回ではイ・ジアンのおばあちゃんが亡くなり、3兄弟の長男が兄弟の夢の旅行のために貯めていた床下貯金を使い、おばあちゃんのお葬式を準備してあげます。
質素な感じにならないように献花もたくさん準備して、人もたくさん呼びます。
そこに参列にきたジアンのことを見守っていた会社の清掃業者のおじいさんが「복이 있으시다. 할머지가 복이 있으셔.(福があった。おばあちゃんは福があった→意訳:幸せだったね)」というシーンがあります。
このシーンは私たち日本人が見てもある程度感動的なシーンですが、そんなお葬式に対する考え方を持った韓国人(特にこれから親の葬式を考える世代)にはさらに胸の熱くなるシーンだったのではないでしょうか。
今回は2回に分けて『나의 아저씨』の魅力と題して、韓国人が共感したであろうことをまとめてましたが、改めてこのドラマの人間模様や韓国社会の縮図みたいな部分でもっと取り上げることができそうだなと思いました。
また、今後それらのさらに細かな部分をどこかで掘り下げたまとめができたらと思います。
コメント