私が韓国にある国民大学の経営大学院でMBA(経営学修士)を修了するまでの話をいくつかのブログに記録していますが、
そもそも社会人の大学院って、MBAってどんなことをやっているのか?単位ってなんだっけ?とか、大学のシステムとMBAで学べることをここではまとめたいと思います。
私自身、MBAってその名のごとく経営学を学ぶんだろうなってことで、リーダーシップ?マーケティング?財務会計?と詳しい授業のことや、その進め方などについてよく分からないまま入学しました。
授業スケジュール
社会人向けのMBAなので、平日の夜間授業や、週末授業など大学院によって異なりますが、国民大学では週末の土曜日に一日授業をする形式でした。
私が入学したのはちょうどコロナ後で、大学院も初めて通学ではなくすべてオンライン授業に切り替えた時期だったため、大学院に実際に行ったのは卒業までに10回もなかったと思います。
参考までに土曜日授業のタイムスケジュールの以下のようになっています。
〇 AB 09:00~11:40
〇 CD 12:40~15:20
〇 E 15:20~16:40
〇 F 16:40~17:55
上記の時間を見てもらうと分かりますが、土曜日の朝から夕方まで一日つぶれてしまいます。
また、お昼時間は1時間と確保されていますが、EタイムとFタイムで続けて授業を取っている場合は、ほとんど休みなく次の授業に移動するようになっています。
実際に上記のスケジュールをオンライン授業ですべて参加した日がありましたが、Eの教授の授業が長引き、謝りながらFの授業に接続したこともありました。
当時私の住んでいたところからはバスで1時間ちょっとかかったので、大学に通っていれば7時過ぎに家を出て、20時前に帰宅するというスケジュールになっていたと思うと、コロナでのオンラインは私にとってはかなりの恩恵だったと思います。
[前期+後期]×2年間
韓国の新学期は3月から始まることは皆さんご存じかと思います。
日本では4月が入学シーズンですが、韓国では小中高大とすべて3月が始まりの新学期の月です。
自分も4年制大学に通っていたことが、10数年前にありましたが、大学は前期と後期で2学期に分かれています。
そして、
前期は3月、4月、5月、6月の4か月間で
夏休みが7月、8月の2か月で
後期が9月、10月、11月、12月の4か月間で
冬休みが1月、2月の2か月で、
を2年間行い、単位取得と卒業試験通過で修了となります。
私が通った大学院では1年修了コースもあり、夏休みの夏季学期、冬休みの冬季学期で1年間休みなく履修して修了するコースもありました。
実は私も最後の2年目の最後を後期ではなく、夏期学期の短期授業を受けて卒業することとなります。
単位と成績の考え方
単位
大学時代に単位がありましたが、どの授業が何点で、必須科目が何でとこれもだいぶ前のことなのですっかり忘れていました。
大学院では卒業(修了)要件のために、2年間(4学期)で30学点(학점)が必要です。
単位の点数は選択する授業によってことなります。
上記のスケジュールを基準にすると
AB、CD は 各3.0点、E、F は 各1.5点で、一学期にフルで履修すると、3+3+1.5+1.5=9点となります。
1年で18点。1年+2年目前期までで27点。残り3点の最後の学期は、フルで9点分履修してもいいし、3点の授業を1つ、もしくは1.5点の授業を二つとっても合計30点になるので卒業要件を満たせます。
成績
授業ではそれぞれ課題や、テスト、授業中の態度などがそれぞれ〇%ずつ分かれており、その結果
A+、A、B、C、Dの5つに分かれており、確かCが及第点、Dが落第点で単位をもらえない点だったと思います。
また、韓国では、企業などの面接を受ける際の履歴書にも出身大学だけでなく、その時の成績を書く欄もあるくらいなので、卒業だけでなく成績も企業が見る文化があるようです。(日本もあるのかもしれませんが、私は書いたことがありませんでした。)
ちなみにA+が4.5点、Aが4.0点、Bが3.5点、Cが3.0点です。
ただ、この大学院で、少なくとも私の周りの韓国人はあまり、成績を気にしていないように見えました。おそらく、修了するだけでも履歴書にかけることや、そもそも年配の方も多く、及第点が取れれば良いという感じの人も多かったです。
逆に私のような外国人は成績によって奨学金の支給額が変わってくるので、課題も一生懸命やるし、テストも頑張る人が多かったように思います。
私も2年間で1科目だけAを取ってしまったので、最終的に平均点が4.48点で修了しました。
学期の奨学金
奨学金の話を思い出したので、ついでに当時メールで案内をもらったものを参考に解説します。
以下のように平均で4.375点以上をとると80%の奨学金なので、半期で約500万ウォンの授業料のうち、400万ウォンは奨学金として大学院から支給され、実質100万ウォンで授業が受けることができます。
もちろんこの奨学金は返済の必要のないものです。
これは外国人のみが対象のものなので、そりゃ外国人は頑張りますよね。
직전학기 성적 |
장학금 (수업료의 %) |
3.5 이하 |
20% |
3.5 초과 3.75 이하 |
30% |
3.75 초과 3.875 이하 |
40% |
3.875 초과 4.125 이하 |
50% |
4.125 초과 4.25 이하 |
60% |
4.25 초과 4.375 이하 |
70% |
4.375 초과 |
80% |
授業(科目)選択
私が各学期で受けたのは以下のような科目です。
それぞれの内容については、各学期でまとめた記事を書く予定なので、ご興味のある方はそちらも見てみてください。
2020年・前期(2020年3月~6月)
〇 リーダーシップ特(別)講(義)[리더십 특강]
〇 数字で見る経営[숫자로 보는 경영]※財務会計入門
〇 国際経営[국제경영]
〇 消費者行動論[소비자행동론]
2020年・後期(2020年9月~12月)
〇 経済イシュー分析[경제이슈분석]
〇 ビジネスモデルの移り変わりと未来経営[비즈니스모델의 변천과 미래경영]
〇 デジタルマーケティング[디지털마케팅]
〇 サービス運営管理[서비스 운영관리]
2021年・前期(2021年3月~6月)
〇 デジタル経営[디지털경영]
〇 リーダーシップ戦略[리더십전략]
〇 流通経営[유통경영]
2021年・夏季学期(2021年7月~8月)
〇 ブランドマーケティング[브랜드 마케팅]
〇 リーダーシップ開発のためのEIコーチング[리더십 개발을 위한 EI코칭]
〇 調達管理[조달관리]
〇 経営学セミナー[경영학 세미나]
教科書・教材
授業の教科書はメイン参考教材みたいなものが1~2冊あり、プラス毎回の講義のスライドが当日の教材としてデータで配られる形が多かったです。
いくつかの授業では課題図書が別途指定され、その内容をまとめるような課題もありまし、
毎授業ごとに関連の論文が配られて、感想文を書くようなものもありました。
基本的に毎期指定されるメイン参考教材はすべて本屋やネットで購入しましたが、実際にその本が授業で必要だった教科は全体の1割ぐらいしかなかったように思います。
教材の中身は教授たちが講義スライドに入れているので、それを見ながら授業を受けるので問題ありませんでした。
(問題ないとは、授業を受けたり、試験に通過するのに一切問題がなかったという意味です)
ちなみに私は毎回授業前にpdfで配られる講義スライドを、会社で1枚2スライドで印刷して、それにメモをしながら録画やZoom講義を受けていました。
これはある授業で使った教材(というかいわゆるビジネス本)です。
中間課題はこの本の読書感想文だったので、かなりの時間をかけて読み込みました。
各ページに日本語でメモをしているのですが、韓国語の読み書きができても、日本語を読んだり理解したりするスピードと比べると全然落ちます。
そのため、各ページごとに何が書いてあったかを忘れないように、日本語でメモしながら読み進めました。
おそらくこれまでの人生でここまで噛り付くように本を読んだのは初めてだと思います。
オンライン授業
私はコロナ後オンライン授業世代で、入学式から卒業式までほとんど大学院に行かずに修了した第1期生と言えます。
オンライン授業にも2種類あり、教授が録画した映像を決められた期間内に視聴するものと、土曜日の実際の授業時間にZOOMでつないで行うものとに分かれます。
録画講義
私の初めての学期であり、大学院としても初めて本格的にオンライン授業を始めることとなった2020年3月からの1年間は、ほとんどの教科が録画講義でした。
録画講義の良いところは何といっても時間を拘束されないことでした。
私の場合は、平日の朝早めに会社に行って、会社の近くのマックで30分~1時間の講義動画を視聴して、土曜日は休んだり家のことができました。
だいたいどの授業も講義動画があげれらてから1週間以内に視聴すると、オンライン上でそれが出席となります。
教授たちもただ動画を視聴させるのではちゃんと見ているのか分からないので、オンライン講座がアップされている「e-Learning」の投稿のできる機能をつかって、授業を視聴していれば解けるような簡単な質問を投稿させることで毎回の出席としている教授もいました。
録画講義のもう一つ良いところとして、聞き取れなかったところや、後の課題などをする際に何度も見直せるところです。
実は大学院の「e-Learning」システムは既に卒業している今でも自分のIDでログインすると、当時の録画授業を見ることができます。
おそらく見直すこともないですが、卒業してからも見たいときにまた見れるというのは良いですよね。
Zoom講義
Zoom講義は土曜日の本来授業のある時間帯に、教授と生徒全員がZoomをつないで行われる講義です。
Zoom講義の良いところは、基本自分のカメラもつけないといけないので、ほどよい緊張感があることと、質問されたり、Zoom内でグループを分けられて短い時間グループディスカッションをするなどは交流もできて、録画講義を一人で視聴するよりは学びがある部分もありました。
毎回Zoom講義をする授業はだいたい生徒もカフェや家などで準備しているケースが多いのですが、何回かに1回Zoom講義をする授業などでは、たまに生徒の中に車を運転しながらつなげていたり、カメラをオフ状態でつなぎ、なんの反応もない生徒もいて、「せっかくお金を払って授業をうけているなら、ちゃんと参加しろよ」と思うことも何度かありました。
私自身も授業は基本的にちゃんと参加しましたが、録画講義に慣れすぎると、土曜日の決まった時間を束縛されるZoom講義があまりしんどく感じることの方が多かったです。
グループワーク
授業の進め方の一つですが、グループワークということで、いくつかのグループを作って、課題をやるものもありました。(もちろんオンラインで)
コロナ前の大学院の教室で直接授業を受けていた頃は、グループワークが活発に行われていたようで、
例えば、授業中に簡単な課題を数人でグループになって話し合い、代表者が一人それを発表したり、何週間にわたる授業での内容を実例でまとめるという課題をグループ内で分担して行ったりしていたようです。
オンラインでもいくつかの授業では学期の開始早々グループを作るように指示があり、そのグループでpptやワードの資料で一緒に課題を取り組んで、提出、もしくは発表するものがありました。
他の投稿でも書きましたが、私が大学院での勉強でいくつか不快に思ったことの一つが、このグループワークです。
案の定ではありますが、4~5人ぐらいのグループになっても、結局実際に手を動かすのは1人~3人ぐらいのものです。
私の通った大学院は特に年齢が上の人もいたため、できる人に完全に任せきりになってしまいます。
もしかしたら日本でも同じようなことはあるかもしれませんが、『「サボり癖」のある韓国人』という私の持っているレッテルからも、モチベーションを下げさせる原因になりました。
おそらく本来オフラインで実際に会ってグループワークをしていたら、役割をうまく分けたり、会話をしながらお互いに学びがある機会にもなったと思いますが、
オフラインではそれらが見えない分、できる人だけがやるという構図ができてしまったのかとも思います。(これはコロナ後の一般的な会社の中で起こっていることとも一緒ですね)
人脈作り
おそらく社会人の通うMBAでは、人脈作りというのは大きなポイントとしてあると思います。
日本で一般企業の一社員として働いていると、社外の人脈って感じることがなかったですが、ソウルでさらに日系の会社にいると、社会や世間の狭さというか近さを感じることが特に多くありました。
韓国には数百という日系の会社がありますが、実際に日本駐在員がソウルいる会社は肌感覚で百数社ぐらいです。
さらにその中でいろいろな集まりがあり、同じような業界では特に集まりやすいので、各企業の日本人同士のつながりはかなり近いものがありました。
その中で直接的に自分たちのビジネスのプラスになる情報ばかり行き来しているわけではないですが、人や業界の情報を知れることで、例えば日本本社への報告をする際に、『○○業界では今こういう動きがあるようです』とか、『〇〇社の方も、人事の問題にはこう対処しているそうです』など、客観的に参考になる情報を伝えることもできました。
MBAの人脈でも、何かしらそのような人脈ができれば良いなと思っていましたが、結果的にそれはなかったです。
外的ことだけでいえば理由は2つです。
オンラインの弊害
ここまで何度も書いていますが、物理的に教授や同じMBAの生徒同士が接する機会がほとんどありませんでした。
実際に会って何かを一緒にすれば、仕事のことやプライベートのことで話ができ、そこから太い人脈につながるともあるかと思いましたが、それもオンライン1期生としては難しい壁でした。
人の質
非常に失礼な言い方ですが、国民大学の経営大学院の生徒の質はそれほど高くありませんでした。
もちろんそこに属する私も然りでしょう。
私が思い描いていたMBAの生徒は、企業の規模は関係ないとして、それぞれ属する企業の管理職以上でバリバリとサラリーマンとして活躍している人、もしくはそうなろうとしている人でした。
しかし、ここではそういう人は少なく、主婦、おそらく定年を過ぎて自営業を始めた人、ジムや美容院を経営している人、ベトナムからの留学生(少し社会人経験有る)、職業軍人でだいたい全体の80~90%。残りの約10%が私のようなサラリーマンでした。
いくつになっても、どんな職業でも学ぶ姿勢が素晴らしいし、それを他人が否定することはよくないです。
ただ、私のイメージとは違う人たちの中で、私の考える人脈を築くこともまた難しい理由の一つでした。
入学前に担当教授に「なぜわざわざ国民大学を選んだんですか?」という質問をなぜされたのか、このように一緒に学ぶ人たちを見たときに少し理解しました。
私が学費の安さや、英語ができなくてもよいということで入学できたということは、同じような理由で入る人の質に関してどうこう言う立場にはありませんが、そういうことでした。
もしMBAの大学院選びをするときにどんなことを気にしたらいいか?と聞かれれば、入りやすさだけでなく、在校生、卒業生にどんな人が多いのか、ということを調べることをお勧めします。
同じ穴の狢、類は友を呼ぶ、とは良く言ったもので、自分が共に学びたい人がいるかどうかも大事なポイントであり、私のように人脈を作ることを期待しているのであれば、こだわるポイントだと思います。
卒業試験
30点の単位の取得とともに、卒業試験に合格することが、修了(卒業)するために必要なことです。
具体的な単位数は忘れましたが、だいたい2学期までフルで履修すると、卒業試験を受けることができ、教科は3教科あります。
細かいことはまた別の投稿でまとめようと思いますが、記述式で履修した科目の期末試験や課題に出た内容とほとんど同じ問題が出題されます。
また、試験前にはだいたいこんな問題が出ますというのも公式的に教えてくれるので、準備するのにとても苦労はしましたが、何とか私も一発で合格することができました。
この時もいくつかの事件がありましたが、またどこかの機会でお話しします。
結局MBAとは
約2年をかけて修了して履歴書などにも最終学歴「MBA」と書けるようになって感じることは、私にとってMBAとは、その言葉の通り『経営学修士』を終えた。
つまり、マーケティングや経済用語や会計、リーダーシップなどの経営に関する学問を少し勉強したということだけです。
これ自体に意味がなかったというわけではなく、仕事に活かせそうなこともありましたし、韓国語の論文を読んだり、韓国語でレポートを何枚も書くことで韓国語力や文章作成能力が少し高くなったかなと思うこともあります。
ただ、実際にこれによって何かすごいことができるようになるものでもなく、あくまで学問の一端に触れたという点では、経営学を少しかじっただけで、もっと深めるにはさらに自分で勉強したり、違う大学院にいったり、博士号を勉強したり、もしくはもっと自分の今の仕事での専門知識を増やしたりすることが必要だと感じています。
そういう意味では今の私にとってMBAとは、ビジネスマンとしてこれからも学び続けるためのきっかけの一つであり、これからの学びへの過程の一つだと思っています。
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